Pixivでの私の作品の転載です
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今日はジメジメとしているが、比較的気温は低くて過ごしやすい。陽気な熱帯から運ばれてきたエネルギが東京には心地いい程度の風を運んでくれる。嵐というものは程度を守れば、比較的快適なものだ。けれども、雨の日は憂鬱と社会から洗脳されている私は、それだけではないのかもしれない、低気圧のせいか気分は少々落ち込んでいた。
今日はオフの日である。正確に言えば、本来ならば外でのライブのお仕事があったのだけれども、台風の接近で中止になった。昨日の夕飯時にプロデューサーからメールがあった。
だから、今日はいつもより余計にベットにいた。特にすることも何もない。トレーニング用品は修理中で今手元にないし、こんなところで発声練習なんかすれば近所迷惑になる、春香、やよいにメールするかとも思ったが、要件が浮かんでこないし、どうせ直接言ってくることはないだろうけど、暇つぶしにメールしているとばれてしまうだろう。別にそこまで迷惑とは思わないだろうけども、なんか嫌だ。
ベットに横たわりながら適当にテレビのチャンネルを回す。分かってはいたが、この時間帯のテレビは全く面白く無い、テレビの電源を落とすと、ようやくベットから抜け出し、しかしパジャマのままでPCの電源を入れる。狐のブラウザで適当に面白そうな記事を流し読みする、その時は一時的に楽しいだけれども、読むのが速い私はすぐに読み終わってしまう。おもむろに emacsを立ち上げ、五目並べでもしてみる。相手を先行にしないと、こっちは必勝法を知っているので面白くない、けれども相手は先行なのに三三が使える。途中まではいい流れだったのだが、相手が三三で成った時、何か馬鹿らしい感じがしてemacsを落とす。最後にRssで購読しているページのタイトルでも眺めてみる。芸能欄の片隅に私たちのユニット名が載っている。春香が泣いたあの日(※『ある日の風景 2010/08/06 』参照)から私たちは必死に頑張った。春香の涙を見たのはあれが最初で最後だ。口で言い争いになることは、それまでしばしばあったけれども涙は見せることはなかった。私は、なんだろう、春香の泣いている姿に、いや、これは自分でも本当に最低だと思うのだが・・・可愛いと思った。愛らしいと思った。そばにかけてやって、抱きしめてやりたいと、そう思った。その時にプロデューサーは春香に近づき抱きしめていた。違うのよ抱きしめるのは私なのよ。すると私はつい大きな声で叫んでいた「泣くんじゃない」と。あれはいわゆる嫉妬という感情からくるものだったのかもしれない。しかし、あれはあれで私の本心である。あの女社長の罵詈雑言に少々頭にきていたのは事実、春香に若さへの醜い嫉妬を吐き出すあの女なんかに泣かされている春香に苛立ってしまっていたのも事実だ。しかし、あの言葉に一縷の不純なものが混じっていなかったのか言われると、それは否定しかねてしまう。そんな感じであろうか。
「春香・・・」
名前をつぶやくと胸が苦しくなる。けれども私はこの感情が恋愛やその類のものでないということは知っている。春香、やよい、プロデューサー、いつもの三人がいて、小鳥さん、社長、他のアイドル候補生たち。なにか、あそこが私の居場所なのだ。内気な私にいつも笑顔で声をかけてくれる。本気で喧嘩もしてくれる。
なんで?人って他人には無関心なのでしょう?少なくとも私はそうだ。そうでしょう、弟があんな目にあった時も、その日からのあんなギスギスした家庭環境の中にいた時も、誰も何もしてくれなかったじゃない!みんなよその家庭のことはよそのことって、私にもありきたりなことしか言ってくれなかったじゃない!結局は自分の身内さえよければ何でもいいんでしょう!そうなんでしょ!!
「違うよ!千早ちゃん!!!」
突然春香の怒った声、怒った顔が頭に浮かんでくる。私は雷撃に打たれたような衝撃を感じた。こんなところにまで、私のこんな深いところにまで春香がいてしまっているのね。
「春香・・・怖いわよ」
けど、なんだろう、とても優しいものが心を暖めてくれる。春香・・・!
私は泣いていた。駄目だなあ。こんな日は、やっぱり何かに熱中して、色々忘れられる日々のほうが私にはいい。こんな暇を持て余すような日は余計なことを考えてしまう。
プルルルルル、プルルルルル
一瞬ビクっとする。電話だ。
私は起き上がり、電話のナンバーディスプレイを眺める。春香だ。
「春香?」
「ああ、千早ちゃん。ベランダでて、ベランダ!」
「な~に?なにかあるの?」
私は言われるがままにベランダの網戸を開け外に出てみる。いつの間にか雨は止んでいて、雲の切れ間から光が差している。
「虹だよ。虹!」
その光が地面に会うところから、光の直線が接戦になるような虹がかかっていた。驚くことに虹は二重になっていた。
「これは・・・ダブルレインボーじゃないの。」
「へえ、『ダブルレインボー』っていうの。千早ちゃんってやっぱり物知りだね。千早ちゃんのところでも見えてるんだなあ。」
「春香?」
「あ、ううん。あのね千早ちゃんのところでも見えてるって、なんか、違う場所にいるのに同じものが見えるってなんか不思議な気持ちがするなあって、空はつながってるんだなって、なんちゃって、アハハ・・・」
「春香・・・」
「千早ちゃん?」
「ん?」
「もしかして千早ちゃん、泣いてた?」
「!」
私はとっさに息を吸い込んでしまう。私の息遣いは完全に向こうに聞こえてしまった。
「あぁ、いや・・・なんか声が湿ってるような気がして。」
「ああ」
「どうかしたの?」
「ただ・・・少し悲しいドラマを見ていただけよ。」
「え~、千早ちゃんを感動させるドラマって!何何?教えて!」
「ちょっと、春香。その言葉色々な意味にとらえられるんだけど?」
「ああ、うぅ、ごめんね千早ちゃん別に他意はないよ。で、何なの?教えて~!」
いつものくだらない会話。けど、くだらないけど、今の私は、カラカラの土に水をあげた花のように生き生きしているような気がする。私はひとりじゃない。
「ふふ、嫌よ。もう教えないわ。」
「え~千早ちゃんのケチ~」
「決して結ばれることはない、けれどもとても暖かくて、けれどもとても悲しいドラマよ。」
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あとがき
大学から点数がヤバいので救済レポート課す旨の電話がありました(^^;;)
台風が着ていたので時事ネタ(?)としてひとつ書いてみましたw駄文失礼しました。
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