2012年6月20日水曜日

ある日の風景 2010/08/05

pixivでの私の作品の転載です
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18476

 暑い日が続く。
 最近、春香とやよいとの新しいユニットを組んだのはいいのだが、いまいちパッとしない。先週のオーディションも落ちたし、しばらくは狙えそうなオーディションもなし。延々と小鳥さんから押し付けられた書類の山を処理する日々。
 しかも、クールビズやらなんやらで冷房の温度も高めに設定されている。キーボードを叩く腕に汗がしたたる。
そんな、劣悪な労働条件のなか、俺は書類を片付けながら色々思考を回していた。
「なぜ、うまくいかないのか。」
 二人の中がそれほど悪いというわけでもない。かと言って慣れ合いが生じているわけでもない・・・と思う。お互いに足を引っ張り合っているような様子も見受けられない。
 考えてもわからないだけだ。ただ単純に今の流行にあっていないだけなのかもしれないし、そもそも人気を出すための論理なんて完成しているはずもない。
 まあ、いつもこのへんで思考はぐるぐると廻ってしまう。一歩も進まないのだ。俺はPCのそばに置いてあるカップ入りのアイスコーヒを一気飲みする。冷たさを咽頭で感じ、何か体に棒のような物がたったかのように気持ちはシャンとした。しかし、最高に醒めた脳みそでも答えは出てこない。
 ふと小鳥さんの机を見る。小鳥さんは淡々と書類の山をこなしている。キーボードの舞台で踊るような指、タイピング速度が一秒間に8文字をラクラクに超える小鳥さんだ、タイピング速度一秒間に4文字が精一杯の俺との仕事の速さとでは雲泥の差がある。本当に優秀な事務員さんだ。
「春香ちゃんとやよいちゃんのことですか?」
 ふと、小鳥さんが口走る。こっちが見ていることに気づいたのだろう。
「小鳥さん?」
「あ、いえ。なんかさっきから仕事しながら別のこと考えてるようだったから。もしかしたらって・・・」
 小鳥さんはどうやら一段落ついたようだ、書類の山の一部をバインダに閉じていく。バインダを棚に戻すと、机に戻り同じくPCのそばに置いてあった蓋付きの缶コーヒーを飲む。
「まあ、そうなんですよ。特に原因みたいなものも考えつかないし、なんでかなあって。」
「そうですね、二人に原因があるとは私も思いませんよ。」
「『とは』・・・ですか?もしかしたら何かわかったんですか?」
「もしかしたらっていう程度のこと何ですけど・・・」
「是非!なんでもいいので是非教えてください。」
 小鳥さんはちょっと驚いた様子だった。まさか俺にこんなに食いつかれるとは思わなかったのだろう。しかし、今のところ社長からは何も言われていないが、このまま人気低迷が続けば春香やよい自身にも何らかの影響は避けられない。特に二人は私がプロデュースしたアイドルだ。春香は特に新人の俺がプロデュースした。何としても彼女たちのユニットを成功させたい。だからとにかくガムシャラにプロデュースした。土下座した回数なんて覚えていない。しかし、その都度その都度、どうしたらもっと二人のユニットを成功させることができるのか。この答えが見えないでいたのだ。
「プロデューサーさん、一回深呼吸してください。」
 小鳥さんがその顔に優しい笑顔を浮かべてそういった。スーーーーハアアアアアア。
「プロデューサーさんは、最近張り詰めすぎですよ。なんかイノシシみたいに一生懸命走るんですけど周りが見えてないんです。ちょっと、一旦リラックスして考えを柔軟にしてみたらどうですか。」
 確かにそのとおりである。俺はどうやら二人を絶対に成功させてやろうと少し焦っていたのかもしれない。
「確かに・・・少し焦りすぎていました。すいません。で、小鳥さんは何に気づいたのですか?」
「ほら。もう焦ってる。」
「あ、すいません。」
「別にいいですよ(クスッ)。・・・あのね、プロデューサーさんはもし社長が何らかの理由で居なくなっちゃったらどうしますか?」

��その夕方、俺はアイドル候補生たちを夕方の川原の散歩に連れていった。
「やよいちゃん、これってセリっていう草じゃない?セリってとっても美味しいよね!」
「うぅ。これはドクゼリですよ。素人が下手に野草に手を出すと本当に死んじゃいますよ。」
「ははは・・・はぁ~。流石やよいちゃんにはかなわないよぅ。」
 二人は相変わらず仲がいい。しかし、野草に関しては百戦錬磨のやよいに軍配が上がったようだ。
 夕方の川原は実にいい。川原を走るように流れてくる涼しい風。開放感ッ!
「どうだ?夕方の川原もなかなかいいもんだろ、千早。」
 俺は二人を眺めている千早に話しかけた。
「なんですかプロデューサー。何かここでレッスンでもするのですか?」
 ははは、千早は相変わらずである。
「い~や!今回は重大な発表があってここに呼んだんだ。レッスンはなしだ、すまないな。」
 千早が少し不満そうな顔をして、何か口にしようとした時に、俺は川原で相変わらずはしゃいでいる二人に呼びかけた。
「お~い、春香、やよい、それと千早。今日は重要な発表があってここに呼び出した。今日から千早を新メンバーとしてユニットを組む!」

「ほぇ!?」
「え!?」
「プロデューサー?」

 三人とも豆鉄砲でも食らったかのうような顔をしている。こんなことは想定済みだ。
「いいか、今日から千早はお前らのメンバーだ。千早、よろしくな。」
「ちょっと待ってください!プロデューサー、そんなこと急に言われても困ります!」
「いいか、千早これはお前にとってもいいことなんだ。お前は最近アイドルランクも伸び悩んでいるし、この状況を打破するのにいい機会だ。春香、やよい、お前たちのユニットにはリーダがいなかったんだ。だから決して表には出ないのだが、バラバラな統一感の無さがユニットの方向性を決めるのを邪魔していたんだ。千早、お前にはこのユニットのリーダを任せたいと思う。その卓越した歌唱力とリーダシップでこのユニットを牽引していって欲しい。きっと人間的にも成長できるとおもう。春香、やよい、おまえたちの元気でこのユニットを引っ張っていくんだ。」
「千早」
「は・・・はい。」
「春香」
「はい!」
「やよい」
「はい!」
「ともにトップアイドル目指して戦ってくれるな!?」
「はい!×3」

 これが転機だった。

続くかもですぅ

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 あとがき

私のアイマスワールドって基本的に春香、やよい、千早で回ってるんですけどなんでだろ?w

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